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2010年6月24日 (木)

判例紹介(秘密保持命令申立事件)

 判例紹介強化月間!ということで、好評進行中のIPコミュニティ最短合格ゼミより、平成21年の最高裁判例「秘密保持命令申立事件」をご紹介します。

【事件】
 
最高裁平成21年1月27日決定(秘密保持命令申立事件)

【要旨】
 特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は、特許法第105条の4 第1 項柱書き本文に規定する『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟』に該当し、上記仮処分事件においても、秘密保持命令の申立てをすることが許されると解するのが相当である。

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学習のポイント
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 今年注目の判例として、平成21年1月の最高裁決定の事件をご紹介します。
この事件は、近年の注目判決の1つですので、論文式試験の直前対策として要チェックです。本事件では、仮処分事件における秘密保持命令の申立ての許否が判断されました。

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解説
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 始めに事案の概要を説明します。

 本件の基本事件は、Aが、本件で秘密保持命令を申し立てたXに対して、Xによる液晶テレビ等の輸入販売等がAの特許権を侵害すると主張して、その差止め等を求めた特許権仮処分命令申立事件である。本件は、この基本事件において、Xがその準備書面の提出を予定しているところ、同準備書面の記載に係る情報は、その保有する営業秘密であると主張して、Aの訴訟代理人等のYらに対して営業秘密保持命令の発出を申し立てた、という事件である。原々決定および原決定はいずれもXの申立てを却下したので、Xは、原決定を取り消し、秘密保持命令の発令を許可するよう最高裁に求めた。

 さて、本事件では何が問題になったかを理解するために、まずは特許法105条の4をおさらいしましょう。

 特許法105条の4には、「裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、次に掲げる事由のいずれにも該当することにつき疎明があつた場合には、当事者の申立てにより、決定で、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該営業秘密に係るこの項の規定による命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができる。」と規定されています。

 特許法105条の4の条文中には営業秘密の保持命令を行う場面が『訴訟』とされているところ、今回の基本事件のように仮処分命令申立の場合においても本条を適用することができるのか?という点が本事件での争点となりました。

 もっと具体的に言えば、条文に示された『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟』には仮処分事件も含まれると解釈できるのか?ということです。

 そして、原々決定、原決定では条文の文言が厳格に適用され、『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟』には仮処分事件も含まれないと判断されたのですが、この解釈が最高裁により否定されました。つまり、最高裁は、『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟』には仮処分事件も含まれると解釈しました。

 その理由について、最高裁は以下のように述べています。

『特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、提出を予定している準備書面や証拠の内容に営業秘密が含まれる場合には、当該営業秘密を保有する当事者が、相手方当事者によりこれを訴訟の追行の目的以外の目的で使用され、又は第三者に開示されることによって、これに基づく事業活動に支障を生ずるおそれがあることを危ぐして、当該営業秘密を訴訟に顕出することを差し控え、十分な主張立証を尽くすことができないという事態が生じ得る。特許法が、秘密保持命令の制度(同法105条の4ないし105条の6、200条の2、201条)を設け、刑罰による制裁を伴う秘密保持命令により、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用すること及び同命令を受けた者以外の者に開示することを禁ずることができるとしている趣旨は、上記のような事態を回避するためであると解される。
 特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は、仮処分命令の必要性の有無という本案訴訟とは異なる争点が存するが、その他の点では本案訴訟と争点を共通にするものであるから、当該営業秘密を保有する当事者について、上記のような事態が生じ得ることは本案訴訟の場合と異なるところはなく、秘密保持命令の制度がこれを容認していると解することはできない。そして、上記仮処分事件において秘密保持命令の申立てをすることができると解しても、迅速な処理が求められるなどの仮処分事件の性質に反するということもできない。
 特許法においては、「訴訟」という文言が、本案訴訟のみならず、民事保全事件を含むものとして用いられる場合もあり(同法54条2項、168条2項)、上記のような秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば、特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は、特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し、上記仮処分事件においても、秘密保持命令の申立てをすることが許されると解するのが相当である。』

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