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2010年6月21日 (月)

判例紹介(つつみのおひなっこや事件)

 判例紹介強化月間!ということで、好評進行中のIPコミュニティ最短合格ゼミより、平成20年の最高裁判例「つつみのおひなっこや事件」をご紹介します。

【事件】
 最高裁平成20年9月8日判決(つつみのおひなっこや事件)

【要旨】
 商標法4条1項11号に係る商標の類否判断に際し、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである。

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学習のポイント
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 注目の判例として、平成20年6月の最高裁判決の事件をご紹介します。この事件は、近年の注目判決の1つですので、論文式試験の直前対策として要チェックです。本事件では、いわゆる結合商標の類否判断における分離観察についての判断が示されました。

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解説
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 始めに事案の概要を説明します。

 Yは、「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きしてなり、指定商品を「土人形および陶器製の人形」とする本件商標の商標権者である。Xは、「つゝみ」の太文字を横書きしてなり、指定商品を「土人形」とする商標(引用商標1)、および、「堤」の太文字1字からなり、指定商品を「土人形」とする商標(引用商標2)の商標権者である。Xは、Yの本件商標が引用商標1、2に類似し、商標法4条1項11号に違反して商標登録されたことを理由として、商標登録無効審判を請求した。

 これに対して、特許庁は、請求不成立の審決をしたので、Xは審決取消訴訟を提起した。原審(知財高裁平成19年4月10日判決)は、本件商標が商標法4条1項11号に該当すると認定し、Xの請求を認容した。これに対してYが上告した。

 なお、本事件の背景として以下の事情がある。仙台市堤町(現:仙台市青葉区堤町)で製造される土人形は、江戸時代に始まり、「おひなっこ」、「つつみのおひなっこ」とも呼ばれていたが、昭和初期に入ってからは「堤人形」と呼ばれるようになった。また、昭和期にはXの父だけが堤人形を製造するようになり、その技術はXに承継された。Yの祖父は、遅くとも昭和56年には堤人形を製造するようになり、その技術はYの父を経てYに承継された。

 さて、本事件の争点は簡単に言えば、本件商標「つつみのおひなっこや」と、各引用商標「つゝみ」、「堤」との類否判断です。より詳細には、本事件における商標の類否判断に際し、いわゆる結合商標である本件商標から「つつみ」の部分だけを抜き出して、この部分と各引用商標とを比較することの是非が問われました。

 これに関して、最高裁は、結合商標の一部を抽出し、その部分だけを他人の商標と比較して商標の類否判断をする手法が許される場合についての考え方を一般論として判示しました。この判示事項が本事件において最も重要な点です。上記した要旨と一部重複しますが、判示事項を判決文から以下に抜粋します。

 『法4条1項11号に係る商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。』

 (以下省略:続きは最短合格ゼミにて)

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