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2012年8月28日 (火)

判例紹介(光ピックアップ職務発明事件)

【事件】

最高裁平成18年10月17日(光ピックアップ職務発明事件)
(平成16(受)781 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成18年10月17日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所)

【要旨】

職務発明に係る外国の特許を受ける権利について従業者等が使用者等に譲渡した場合において、当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求について、特許法35条の規定が類推適用されると解するのが相当である。

【ポイント】

 この事件では、特許法35条に規定される職務発明における「相当の対価」について、発明者である従業者が使用者に対して外国での特許を受ける権利について譲渡した場合に、その譲渡に対する相当の対価を求めることができるのか否かが争われました。

【解説】

 始めに事案の概要を説明します。本件は、X(被上告人)が職務発明について、我が国の特許を受ける権利と共に外国の特許を受ける権利をY(上告人)に譲渡したことにつき、Yに対し、特許法第35条第3項(改正前のもの)に規定される相当の対価の支払いを求めた事案です。

判決文では以下のように判示されています(部分的に要約しています)。

①特許を受ける権利は、各国ごとに別個の権利として観念し得るものだが、社会的事実としては、実質的に1個と評価される同一の発明から生じるものである。

②当事者間には、法律関係を一元的に処理しようという通常の意思があると解される故に、特許法35条の規定についてその趣旨を外国の特許を受ける権利にも及ぼすべき状況が存在する。

③したがって、職務発明に係る外国の特許を受ける権利について従業者等が使用者等に譲渡した場合において、当該外国の特許を受ける権利の譲渡に伴う対価請求について、特許法35条の規定が類推適用されると解するのが相当である。

 この判決により、従業者等は、外国に特許出願された場合に関しても対価請求をできることになりました。外国の特許を受ける権利について直接的に35条を適用するのは文理上困難ですのであくまで“類推適用”としている点がポイントです。

 ここで、基本事項について確認してみましょう。

 まず、「職務発明」の成立要件について条文に沿って整理してみると、以下の3要件に分説することができます。なお、以下に示す要件に該当しない発明(職務発明以外の発明)は「自由発明」と呼ばれます。また、職務発明と自由発明の中間的な発明、具体的には、従業者等の発明行為が職務上のものではないがその発明が使用者等の業務範囲に入るような発明は「業務発明」と呼ばれます。

職務発明の成立要件(特許法35条1項)

①従業者等が行った発明であること

②発明をするに至った行為が使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明であること

③その発明がその性質上、使用者等の業務範囲に属すること

 次に、職務発明の成立要件について工業所有権法逐条解説ではどのように説明されているかを抜粋します。

『・・・現行法においては「・・・現在又は過去の職務に属する発明」としたのである。具体的な例をもって示すと、現行法においては同一企業内において職務を変わった場合、転任前の職務に属する発明を転任後にした場合も職務発明に属することになる。なお、職務発明は同一企業内の場合に限られ、甲会社の時代の職務上の経験にもとづいて乙会社へ転任後発明したとしても、それは「その使用者等における」ということにならないので職務発明には該当しない。またここにいう「職務に属する発明」とは、必ずしも発明をすることを職務とする場合に限られないが、自動車の運転手が自動車の部品について発明したような場合まで含める趣旨ではない。すなわち、ここにいう職務に属するという場合の職務は、ある程度発明活動に関連をもった職務に限られる。このような職務発明について従業者等が特許を受けたときは、使用者等がその特許権について通常実施権を有するとしたのは、両者の間の衡平ということを考えたものにほかならない。すなわち、職務発明がされるまでには、使用者等も直接間接にその完成に貢献していることを参酌したものである。』

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