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2012年10月 3日 (水)

判例紹介(オリンパス事件)

【事件】
 最高裁平成15年4月22日(オリンパス事件)
(平成13(受)1256 補償金請求事件 特許権 民事訴訟 平成15年04月22日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所)

【要旨】

職務発明について特許を受ける権利を使用者に承継させた従業者は、使用者があらかじめ定める勤務規則その他の定めによる対価額が相当の対価の額に満たないときは、その不足分を請求することができる。

【ポイント】

 この事件では、特許法35条に規定される職務発明における「相当の対価」について、勤務規則等で予め定められた対価額をもって特許法35条にいう「相当の対価」の全てとすることは妥当でないと判断されました。

【解説】

 本事件において、元従業者は、在職中に一応の報奨金(対価)を受け取っていたのですが、この対価額は、形式的な雇用契約は存在するものの、事実上、使用者側が一方的に決めたものでした。そこで元従業者は「対価をもっと貰えるはずだ」と不足分を請求してみたところ、使用者(会社)は「勤務規則で約束した通りに対価を払っているからそれで十分である」と突っぱねたので、両者が争うことになりました。

 判決では、「勤務規則等に定められた対価はこれが特許法35条3項、4項(注;平成16年改正前)所定の相当の対価の一部に当たると解することはできるが、それが直ちに相当の対価の全部に当たるとすることはできない。その対価が、特許法35条の趣旨・内容に合致する額となって初めて、法上の相当の対価に当たると解する」と内容の判示をしました。判決文の該当箇所を抜粋して以下に示します。

『・・・いまだ職務発明がされておらず、承継されるべき特許を受ける権利等の内容や価値が具体化する前に、あらかじめ対価の額を確定的に定めることができないことは明らかであって、上述した同条の趣旨及び規定内容に照らしても、これが許容されていると解することはできない。換言すると、勤務規則等に定められた対価は、これが同条3項、4項所定の相当の対価の一部に当たると解し得ることは格別、それが直ちに相当の対価の全部に当たるとみることはできないのであり、その対価の額が同条4項の趣旨・内容に合致して初めて同条3項、4項所定の相当の対価に当たると解することができるのである。したがって、勤務規則等により職務発明について特許を受ける権利等を使用者等に承継させた従業者等は、当該勤務規則等に、使用者等が従業者等に対して支払うべき対価に関する条項がある場合においても、これによる対価の額が同条4項の規定に従って定められる対価の額に満たないときは、同条3項の規定に基づき、その不足する額に相当する対価の支払を求めることができると解するのが相当である。』

 要するに、立場の強い使用者側が一方的に対価額を決めつけてもダメだよ、と裁判所は判断した訳です。ただ、これだと使用者側も「じゃあ、どうやって対価を決めてどれだけ払えば訴訟リスクがなくなるのか?」と困ってしまうということで、平成16年度の法改正に繋がった訳です。

 平成16年の法改正では、特許法35条4項において「相当の対価」の決定に関する規定が定められ、同条5項において「相当の対価」が不合理な場合の対価額の算定に関する規定が定められました。このような改正法の下でも、相当の対価の定めが不合理と認められる場合には、対価が裁判所によって決定されるという構造には変わりありませんので、依然として本判決は先例としての意義を有するものと考えられます。なお、本判決では、相当の対価の時効に関しても判示されていますが、これは弁理士試験には出にくいと思いますので割愛します。

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