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2012年10月 3日 (水)

判例紹介(氷山印事件)

【事件】

 最高裁昭和43年2月27日(氷山印事件)
(昭和39(行ツ)110 商標登録出願拒絶査定不服抗告審判審決取消請求事件 商標権 行政訴訟)

【要旨】

商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。

【ポイント】

 本事件は、商標法上重要な概念である「商標の類否判断」についての判断基準を示した重要な判例です。その要旨は種々のテキスト、書籍で引用されていますが、一度、それらの出典を押さえておくことは重要であると思われます。

【解説】

 始めに、事案の概要を簡単に説明します。

 Xは、指定商品を「硝子繊維糸」として、黒色の円形輪郭内の上半分に淡青色の空、下半分に濃青色の海面、中央部に海面に浮き出た氷山の図形を描き、円形輪郭内の上部周縁に「硝子繊維」、氷山の図形の下に「氷山印」、円形輪郭内の下部周縁に「日東紡績」の文字を記載した商標(以下「本願商標」)の登録出願をした。Y(特許庁)は、本願商標が指定商品を「糸」とする登録商標「しょうざん」(以下「引用商標」)と称呼が類似し、旧商標法2条1項9号(注:現行法4条1項11号)に該当するとして出願を拒絶した。これに対してXが審決取消訴訟を提起したところ、両商標の類似性が否定され、審決が取り消された。これに対してYが上告した。

 さて、本事件では最高裁においてもYの主張は受け入れられず上告棄却となりました。その際に最高裁は、商標の類否判断に関し、今日でも用いられている重要な判断基準を示しました。この部分を判決文から抜粋します。

『商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。』

 また、最高裁は、商標の外観、観念、称呼に関しても重要な基準を示しました。審査段階では、外観、観念、称呼に基づいて画一的に判断される傾向がありますが、裁判においては、外観等はあくまで誤認混同のおそれの有無を判断する一応の基準に過ぎない、ということをよく理解しましょう。

『商標の外観、観念または称呼の類似は、その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず、従つて、右三点のうちその一において類似するものでも、他の二点において著しく相違することその他取引の実情等によつて、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては、これを類似商標と解すべきではない。』

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