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2012年12月21日 (金)

判例紹介(リパーゼ事件)

【事件】
 最高裁平成3年3月8日(リパーゼ事件)
(昭和62(行ツ)3 審決取消 特許権 行政訴訟 平成3 年03 月08 日 最高裁
判所第二小法廷 判決 破棄差戻し 東京高等裁判所)

【要旨】
 特許出願に係る発明の要旨認定は、特段の事情がない限り特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきである。明細書の記載の参酌は、特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか、一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかである等の特段の事情がある場合に限って、許容されるにすぎない。

【ポイント】
 
この事件では、権利化前(審査、審判段階)における特許請求の範囲に記載された発明の要旨認定について重要な判示がなされました。特許法70条の規定はあくまで権利化後における特許発明の要旨認定に関するものであり、権利化前における発明の要旨認定については本判例において判示された規範が用いられますので、両者を混同しないように気をつけて下さい。

【解説】
 まず、本件は出願の権利化前の段階(審査、審判段階)における発明の要旨認定に関する規範だということに十分注意してください。

 さて、本件の特許請求の範囲には発明特定事項として「リパーゼ」という発明特定事項が記載されていました。これに対して、本件の明細書中には、この「リパーゼ」の下位概念にあたる「Raリパーゼ」を一例とした実施例のみが記載されており、それ以外に、「リパーゼ」の下位概念に関する実施例の記載がありませんでした。本件特許出願の拒絶査定に対する審判請求において特許庁がした審決は、本願発明の要旨を特許請求の範囲記載のとおり認定した上、引用例に記載された発明に基づいて本願発明の進歩性を否定し、本件審判請求は成り立たないとしました。これに対して、審決取消訴訟では、「文言上はリパーゼについて何らの限定もないが、明細書の記載に照らせばRaリパーゼを意味するものと解するのが妥当である」という発明認定がされました。そして、このような発明認定を前提として、進歩性等の特許要件が判断されました。

 しかし、このような認定について、最高裁は、発明の要旨認定に関する法令解釈を誤った違法があると判断しました。確かに、特許法36条5項の趣旨に照らせば、審査官や審判官が発明特定事項の過不足を勝手に判断し、実際には特許請求の範囲に記載されていない発明特定事項をも加味して特許出願に係る発明の特許性を判断するのはおかしいですね。(なお、本事件は平成3年のものですので、改正前の特許法36条5項の趣旨に沿って判断されていましたが、現行法でも結論は同じです。)

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コメント

権利化前とか権利化後とかは関係ありません。

リパーゼ事件の最高裁判決では明確に
「特許法29条1項及び2項所定の特許要件、すなわち、特許出願に係る発明の新規性及び進歩性について審理するに当たっては、この発明を同条1項各号所定の発明と対比する前提として、特許出願に係る発明の要旨が認定されなければならないところ」
と判示しています。

つまり、リパーゼ判決の射程は「特許要件」だけに及びます。
権利範囲=技術的範囲の解釈には無関係です。

権利化前でも技術的範囲の判断(鑑定)は行いますがリパーゼ判決はもちろん無関係です。
また、権利化後でも特許の有効無効の判断は行いますが、このときはリパーゼ判決の判示事項が及びます。

なお、リパーゼ判決後に混乱が生じ、裁判官までが、技術的範囲の解釈にリパーゼ判決を適用したトンデモ判決が出るに及んで、「確認的に」特許法70条2項が新設されました。
リパーゼ判決を技術的範囲の解釈に適用してはいけないということを明確にする趣旨です。

投稿: 某弁理士 | 2013年9月 7日 (土) 21時49分

パテ二重丸と申します。

判決文によると、新規性・進歩性の特許要件の判断については、上記判例が適用されると記載されています。
それ以外の特許要件の判断にも適用されるのでしょうか。
ちなみに、それ以外の特許要件の判断については、射程範囲外だという人もいます。

また、弁理士試験ではどちらで解答するのが、妥当なのでしょうか。

以上2点お願いします。

投稿: パテ二重丸 | 2013年2月21日 (木) 13時44分

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